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生成AIが営業の世界を変える

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データドリブン営業とAI活用の最新動向
心を動かす営業の本質との両立

実は、B2B購買決定の50%は「感情」で決まっています。データとAIは、その感情をさらに増幅させる強力な味方となります。

意外な事実:B2B購買者ほど「感情」で動いている

「営業は結局、心が動いた瞬間に決まる」。この主張、実は世界的な調査でしっかり証明されています。Google、Gartner、Motistaが共同で行った調査によると、B2B(Business to Business:企業間取引)の世界では、ブランドと顧客の感情的なつながりが50%以上にも達しています。これは、B2C(Business to Consumer:企業対消費者取引)の10〜40%を大きく上回る数字です。

50%
「個人的な価値」を感じたときの購入可能性の上昇率
8倍
プレミアム価格でも「買いたい」と思う気持ちの増加
「私たちは考える機械ではなく、考える感情機械である」
— 神経科学の研究より

神経科学者の研究によれば、脳の感情を司る部分に損傷がある患者は、情報を論理的に処理できるのに、決断ができないことが分かっています。つまり、営業において感情こそが意思決定の核心だということが、科学的にも証明されているわけです。


データドリブン営業、今どうなってるの?

2025年に向けて、変化が加速中 急成長

CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理システム)の世界市場は2023年に1,075億ドル(前年比13.4%増)まで成長しました。あのSalesforceが約20%のシェアで、なんと12年連続トップを走り続けています。

調査会社Gartnerの予測では、2025年までにB2B営業のやり取りの80%がデジタルチャネルで行われるようになるとのこと。さらに2026年までには、B2B営業組織の65%が「勘と経験」から「データに基づく判断」へシフトする見込みです。

データドリブン企業、実はこんなに差がついてる

何が変わる? データドリブン企業の強さ
新規顧客の獲得しやすさ 23倍も高い(McKinsey調べ)
既存顧客の維持のしやすさ 6倍も高い(McKinsey調べ)
収益性 19倍も高い(McKinsey調べ)
売上目標の達成確率 58%も高い(Forrester/Collibra調べ)
目標を大きく超える確率 162%も高い(Forrester/Collibra調べ)

日本企業の現状:導入はしたけど…「塩漬け」問題

▲ これは見逃せない日米格差
日本企業のCRM(顧客関係管理システム)導入率は2024年時点で37.2%。米国の74〜91%と比べると、約2〜2.5倍も差があります。
12.7%
日本のSFA(Sales Force Automation:営業支援システム)へのデータ入力完了率
41.3%
米国のSFA(営業支援システム)データ入力完了率(なんと28.5ポイントもの差!)

株式会社ハンモックの調査(従業員300名以上の企業対象)によると、SFA/CRM(営業支援・顧客管理システム)の全機能をしっかり使いこなせている企業はわずか27.6%。約6割が「ちゃんと定着していない」と悩んでいます。日本オラクルの調査でも、SFA/CRMで「収益アップを期待」している企業が48%なのに、実際に達成できたのは25%だけ。期待と現実のギャップは23ポイントにも達しています。


AI・生成AIが営業の世界を変える

実際、どれくらい生産性が上がるの?

McKinseyの試算では、生成AI(Generative AI:テキストや画像を自動で作ってくれる人工知能)が営業・マーケティングの分野で年間0.8〜1.2兆ドルもの生産性向上をもたらす可能性があります。AI導入企業は、導入していない企業に比べて売上成長率が1.3倍という結果も出ています。

数字で見る実際の効果

35%
Smart Trackers使ったら成約率がこんなにアップ(Gong社)
50%
AI(人工知能)のおすすめ行動を実行したら成約率がさらにアップ(Gong社)
2時間15分/日
AIによる自動化で、1日あたりこれだけ時間が浮く(Salesforce調べ)

生成AIの活用も急速に広がっていて、2024年には65%の組織が日常的に生成AIを使っています(前年の約2倍)。営業分野でのAI導入は、2023年の24%から2024年には43%へと急増。Deloitteの調査では、74%の組織がAI投資の効果について「期待通り、もしくはそれ以上」と答えており、20%は30%を超える投資効果を実感しています。

日本企業も負けてない!先進事例をご紹介

■ 三井住友銀行(SMBC)グループ

2023年7月に生成AIアシスタント「SMBC-GAI」を開発。驚くことに、わずか4ヶ月で実用化にこぎつけました。

月間22万時間以上の労働時間削減を実現
2027年3月期まで約500億円のAI投資を計画中
■ パーソルグループ

国内グループ社員1万8,000人以上が生成AIを活用。2025年4月には「グループAI・DX本部」を新設しました。

「セールスのゼロ化」サービスをスタート
AIで営業プロセスの工数をゼロにする挑戦中
■ 日本生命保険

約1,000万人もの顧客情報をAIで分析。約500のセグメントに細かく分けています。

約2,000種類ものパーソナライズメッセージを自動生成
経験が浅い職員でも的確な提案ができるようになった
■ 桧家ホールディングス

AIチャット型Q&Aサービスを積極的に活用中。

活用している営業の受注件数が約1.5倍に増加

「信頼」は、実は数値化できる経営資産

信頼が成約率やLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)に与える影響

信頼が営業成果に与える影響は、数字でハッキリ出ています。Forresterの調査では、信頼されている企業から買った人は他の人にも勧めたくなる気持ちが約2倍高くても買いたいと思う気持ちも約2倍になっています。

▲ 信頼を失うと、こんなことに…
信用を失った顧客の63%が、その会社との取引をやめてしまいます(PwC信頼度調査2024)

B2B購買者が期待していることと、現実のギャップ

項目 割合
営業担当者に「信頼できるアドバイザー」になってほしいと期待 84%
「実際は、ほとんどが単なる取引的なやり取りだ」と感じている 73%
仕入れ先を選ぶとき「信頼がめちゃくちゃ重要」と回答 99%
紹介で知った会社への信頼度 92%(ダントツで高い)
行動経済学の世界では有名な理論があります。ダニエル・カーネマンのプロスペクト理論(損をすることは、得をすることの約2倍重く感じるという心理)や、ロバート・チャルディーニの影響力の6原則(お返ししたくなる心理、みんながやってるからやりたくなる心理、好きな人の言うことは聞きたくなる心理など)。これらはすべて、営業で心理的要因がいかに大切かを裏付けています。

AI時代でも、人間的なスキルの価値は変わらない

AI時代になっても、むしろ人間的なスキルの価値は高まっています。

$29,000
EQ(Emotional Intelligence:感情知性)が高い専門家の年収の差
20%
EQ(感情知性)が高いチームの生産性向上率

ソフトスキル(コミュニケーション能力や共感力など)が足りないことで、米国企業は年間約1,600億ドルもの損失を出しています。業界誌Selling Powerは「AIはデータを処理してパターンを見つけるのは得意だけど、信頼を築いて長い付き合いをしていく感情的な知性には欠けている」と指摘しています。

本当の意味での共感、複雑な人間関係をうまく渡り歩くこと、倫理的な判断、微妙なニュアンスを踏まえた意思決定。これらはまだまだ、人間にしかできない営業スキルです。


日本とアメリカ、営業文化の違いを知ろう

文化的な背景が、デジタル化を難しくしている?

文化研究で有名なHofstedeの分析によると、日本の「不確実性回避指数」は92(米国は46)。つまり、日本は不確実なことを避けたがる傾向が米国の約2倍あります。これが、新しいツールの導入に慎重になる理由の一つといえるでしょう。長期志向指数も日本88対米国26と大きな差があって、日本では短期的な投資効果より、長く続く取引関係を大事にする傾向が強くなっています。

日本の「暗黙知(言葉にされていないノウハウ)」文化の影響
営業のコツは「見て覚えろ」「経験で身につけろ」という文化が根強く、名刺や顧客情報を「自分の財産」として抱え込む傾向もあります。実際、「『この会社を支えているのは俺だ』という意識が強く、後任者への引き継ぎをあまり重視しない文化が、営業プロセスの標準化を妨げている」という指摘もあります。

経済産業省の「2025年の崖」警告、聞いたことありますか?

▲ これは急がないとマズい
経済産業省は、DX(Digital Transformation:デジタル技術で仕事のやり方を変えること)を進めないと、2025年以降の5年間で毎年最大12兆円もの経済損失が出ると警告しています。
項目 日本 米国・ドイツ
DX(デジタル変革)が「うまくいっている」と答えた企業の割合(IPA調べ) 約30% 約80%
10年以上DX(デジタル変革)に取り組んでいるのに、十分な成果が出ていない企業(PwC調べ) 約65%

2024-2025年、営業の最新トレンドをチェック

インテントデータとABM(Account Based Marketing:特定企業を狙うマーケティング)が熱い 注目

インテントデータ(お客さんがWebで見ている内容から、買いたい気持ちを読み取るデータ)の活用が急速に広がっています。米国では62%の企業が、少なくとも1つのインテントデータツール(解決策ツール)を使っています。

ABM(アカウントベースドマーケティング)とは?
従来の「広く浅く」アプローチではなく、ターゲットとなる特定企業(アカウント)を絞り込み、その企業に合わせたカスタマイズされたマーケティング・営業活動を行う手法です。企業全体の意思決定者や影響力のある人物を特定し、組織的にアプローチすることで、大型案件の獲得確率を高めます。

■ 6senseとBomboraを組み合わせた事例
今まさに買いたい企業の数が15%増加
「購入」段階から商談につながる予測精度が20%向上
見込み客から成約までの確率が14%アップ

日本でも国産ツールが続々登場
Sales MarkerやITreviewといった国産ツールが出てきています。エン・ジャパンの「エンSXセールス」では、アポが取れる確率が2.5倍成約率が2倍電話をかける回数は60%も減少という結果が出ています。

ABMの効果、注目に値します

82%
ABM(特定企業向けマーケティング)プログラムを実施しているB2B企業
97%
「他の施策より投資効果が高い」と答えたマーケター

ABMを使っている企業の91%が「平均の取引金額が増えた」と報告していて、25%は50%以上も増加しています。

RevOps(Revenue Operations:収益を最大化する組織横断の仕組み)が急成長中 急成長

RevOps(レベニューオペレーション)とは?
従来は別々に動いていた営業・マーケティング・カスタマーサクセスの3部門を統合し、収益(Revenue)を最大化するために一つのチームとして機能させる組織体制です。データやプロセス、ツールを統一することで、部門間の連携を強化し、顧客体験を一貫させ、収益成長を加速させます。

営業・マーケティング・カスタマーサクセス(顧客の成功を支援する部門)を一つにまとめるRevOpsという考え方が、急速に広まっています。48%の企業がすでにRevOps機能を持っていて(前年比15%増)、Gartnerは2025年までに急成長企業の75%がRevOpsを導入すると予測しています。

300%
VP of Revenue Operations(収益統括責任者)という役職が、過去18ヶ月でこれだけ増加

RevOps(収益統括オペレーション)を導入すると、こんなに変わる

何が良くなる? 改善の度合い
売上の成長 36%増加
利益率 最大28%向上
営業の勝率 38%増加
顧客が離れない率 36%向上

部門間の連携がうまくいっている企業は、58%速く売上が伸び72%も高い利益率を達成しています。

ハイブリッド営業(対面とオンラインのミックス)が定着

McKinseyの調査では、対面とオンラインを使い分けるハイブリッド営業を採用している企業は、どちらか一方だけの企業より最大50%も売上成長が速いという結果が出ています。76%の営業リーダーが「リモート営業は対面と同じか、それ以上に効果的」と答えています。

日本でも定着してきました
コロナが落ち着いた後も、約9割の企業がオンライン商談を続けていて、対面とオンラインの比率は約3:7でハイブリッド型が定着しています。


結論:データ・AIと「心を動かす営業」、どう組み合わせる?

テクノロジーは人間を「置き換える」んじゃなくて「強化する」もの

ここが一番大事なポイントです。データ・AIと人間らしい営業は、対立するものではなく、お互いを高め合う関係にあります。

学術誌Management Scienceに掲載された研究「High Touch Through High Tech」(Ahearne et al., 2008)は、ITを使うことで営業担当者の顧客サービスや柔軟性が向上することを証明しています。テクノロジーが営業成績を上げるメカニズムは、人間らしい行動を強化することにあります。

「人間が主役で、テクノロジーがサポート役」
AIは「人間に取って代わる」のではなく「人間の生産性を加速させる」もの。ほとんどの使い方では、最終的な判断は人間が行う「ヒューマン・イン・ザ・ループ」という形になっています。
— Salesforce
83%
AIを活用している営業チームで、売上成長を達成
66%
AI非活用チームの売上成長達成率

経営者のみなさまへ、4つのご提案

1 「感情」と「データ」、両方大切にしましょう
データドリブン営業への移行は避けられない流れです。でも成功の秘訣は、「感情」と「データ」の両立にあります。B2B市場では、購買決定の約50%を感情が占めています。データとAIは、この感情的なつながりをさらに強くするためのツールとして活用しましょう。
2 組織の文化を変えて、人材を育てる投資を
日本企業が直面している「2025年の崖」を乗り越えるには、ツールを入れるだけでは不十分です。組織文化を変えて、人材育成にしっかり投資することが欠かせません。
3 信頼の築き方を「型」にして、テクノロジーで広げる
信頼を築くことは、「型」にして、プロセスとして設計できます。テクノロジーは、その型を何度も再現したり、規模を大きくしたりする触媒になります。
4 最新トレンドを積極的に取り入れましょう
インテントデータ、ABM、RevOps、ハイブリッド営業といった最新のトレンドを前向きに取り入れて、競合に差をつけましょう。
◇ 未来へのまなざし
データとAIは、営業の本質である「心を動かす」力を奪うものではありません。むしろ、その力をもっと大きくして、より多くのお客様に、より深く、より効果的に届けるための強力な武器になります。テクノロジーと人間らしさの融合こそが、これからの営業組織が目指すべき方向性だと、私たちは考えています。

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