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「申し訳ございません」をやめたら、お客様が戻ってくるようになった話

「申し訳ございません」をやめたら、お客様が戻ってくるようになった話

クレームが来ると、つい身構えてしまう

電話が鳴る。画面に表示された番号を見て、心がざわつく。先日商品を購入されたお客様からだ。なんとなく嫌な予感がして、電話に出る前に一呼吸置く。

案の定、クレームだった。商品に不具合があった、対応が遅い、思っていたものと違った…。こんな時、あなたはどう対応していますか?

多くの経営者が「まずは謝る」ことから始めるのではないでしょうか。「申し訳ございません」「こちらの不注意で」「ご迷惑をおかけして」…。確かに、謝罪は大切です。でも、謝り続けるだけで本当にお客様は満足するのでしょうか。

ある製造業の社長が気づいた「謝罪の落とし穴」

関西で金属加工業を営む田中さん(仮名)は、従業員15名の会社を経営しています。年商は約2億円。同業他社との価格競争が激しく、リピート率の向上が課題でした。

田中さんの会社では、月に10件程度のクレームがありました。品質に関するもの、納期に関するもの、コミュニケーションのすれ違いなど内容は様々です。これまでは、クレームが来ると真っ先に謝罪し、原因を説明し、再発防止策を約束するという対応を取っていました。

しかし、あることに気がついたのです。丁寧に謝罪し、しっかりと対応したにも関わらず、そのお客様からの次の注文が来ない。むしろ、クレームがあったお客様の9割は、そのまま取引が終了してしまう。これは一体なぜなのか。

クレームの奥にある「本当の期待」

田中さんは、クレーム対応を録音し直して分析してみました。すると、興味深いことが分かったのです。お客様が求めているのは「謝罪」だけではなかった。むしろ、問題が起きたことで不安になった気持ちを安心に変えてほしい、今後も安心して取引を続けられる相手だと確信したい、それが本当の期待だったのです。

つまり、お客様は「なぜこうなったのか」よりも「今後どうなるのか」に関心があった。過去の責任追及よりも、未来への安心感を求めていたのです。

「謝罪型」から「価値提供型」への転換

田中さんは、クレーム対応のプロセスを根本的に見直しました。従来の「謝罪→原因説明→再発防止」から、「共感→価値提供→未来への約束」へと変更したのです。

例えば、納期遅れのクレームに対して、従来なら「申し訳ございません。工程管理が不十分でした。今後は…」と始めていました。しかし新しいアプローチでは「お忙しい中でお時間をいただき、ありがとうございます。予定に影響が出てしまい、きっとご不安に感じられていることと思います」から始めるようになったのです。

そして謝罪の後は、すぐに「今後このようなことが起こらないよう、具体的にこのような管理体制に変更いたします」と未来の行動を示し、さらに「今回のご指摘をいただいたおかげで、品質管理体制を見直すきっかけになりました。他のお客様にもより良いサービスを提供できるようになります」と、問題を価値創造の機会として捉える姿勢を示すようになりました。

変化の実感は3ヶ月後に現れた

対応方法を変えて3ヶ月後、驚くべき変化が起きました。クレームをいただいたお客様からの再注文率が、従来の12%から24%へと倍増したのです。それだけではありません。クレーム対応後に新たな案件を紹介してくださるお客様も現れました。

さらに興味深いのは、クレーム対応にかかる時間も短縮されたことです。謝罪に時間を費やすよりも、解決策と今後の改善について具体的に話す方が、お客様の納得度が高く、通話時間は平均で3割短くなりました。

なぜ「価値提供型」の対応が効果的なのか

この変化の背景には、顧客心理の本質があります。クレームを入れるお客様の多くは、実は「この会社との関係を続けたい」と思っています。だからこそ、わざわざ時間を割いて連絡をしてくるのです。

しかし、ひたすら謝罪されると「この会社は問題ばかり起こす会社なのかもしれない」という印象を与えてしまいます。一方で、問題を改善の機会として捉え、具体的な価値提供につなげる姿勢を見せると「この会社は成長し続ける信頼できるパートナーだ」という認識に変わるのです。

ブランディングの視点で見ると、クレーム対応は単なる「問題処理」ではなく「ブランド価値を伝える重要な接点」だと言えるでしょう。お客様が困った時にどんな価値を提供できるか、それこそが真のブランド力の現れなのかもしれません。

具体的な「価値提供型」対応の3つのステップ

ステップ1:感情に共感し、安心感を提供する

「ご連絡いただき、ありがとうございます」から始め、お客様の気持ちに寄り添います。「ご不安に感じられたことと思います」「お困りになったのではないでしょうか」など、相手の立場を理解していることを示すのです。

ステップ2:解決策と改善策を具体的に伝える

問題の原因よりも、今後どう改善するかに焦点を当てます。「明日の午前中までに交換品をお届けします」「来週から新しいチェック体制を導入します」など、具体的で実行可能な内容を伝えることが重要です。

ステップ3:価値創造の機会として位置づける

「今回のご指摘により、より良いサービスを提供できるようになります」「他のお客様にもメリットがある改善ができそうです」など、問題を会社全体の成長につなげる視点を示します。

クレームは「関係性を深める絶好の機会」

田中さんの会社では、今ではクレームを「お客様との関係性を深める貴重な機会」として捉えています。問題が起きた時にこそ、その会社の真価が問われる。そして適切に対応できれば、通常の取引では得られないレベルの信頼関係を築くことができるのです。

あなたの会社でも、最近のクレーム対応を振り返ってみてはいかがでしょうか。お客様は本当に謝罪を求めているのか、それとも別の何かを期待しているのか。そこに気づくことができれば、クレームを成長の機会に変えることができるかもしれません。

明日からできる小さな一歩として、次にクレームをいただいた時は「申し訳ございません」の前に「ご連絡いただき、ありがとうございます」と言ってみる。それだけで、お客様との関係性が少しずつ変わり始めるのを感じられるはずです。

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