
「企業経営に必要な5つのリソース(ヒト、モノ、カネ、情報、時間)」をテーマにした全5回の連載記事 【第5回】5つのリソースが融合するリソース・エコシステム構築論
【第5回】
5つのリソースが融合するリソース・エコシステム構築論
はじめに
「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」「時間」の5つのリソースは、それぞれが独立しているわけではありません。これらを有機的につなぎ合わせ、さらには社外のリソースも巻き込みながら循環させることで、新しいアイデアや価値が生まれやすくなります。
この仕組みを本連載では「リソース・エコシステム」と呼び、最終回ではその考え方と導入のポイントを整理してみましょう。
―――――――――――――――――
1. リソース・エコシステムとは
(1) 社内外を巻き込む循環
自社内だけで完結するのではなく、パートナー企業や顧客コミュニティ、大学や研究機関、さらには個人のフリーランス人材など、社外リソースも組み込んで相互作用を狙うのがリソース・エコシステムの特徴です。
たとえば、商品開発で自社が得意としない技術を持つスタートアップと協力したり、学術研究の知見を得るために大学と共同研究を行ったりすることで、自社だけでは実現しにくかったイノベーションが起こりやすくなります。
(2) 組み合わせの多様性
ヒトのリソースを社外から広く募り、モノのリソース(設備や倉庫など)をシェアし、カネのリソースをクラウドファンディングや投資で集める。さらに情報のリソースとしてAIやビッグデータを活用し、時間のリソースをフレキシブルに使う。こうした組み合わせが自由に行われるとき、エコシステムが最大の力を発揮します。
―――――――――――――――――
2. プラットフォーム思考の重要性
(1) 社内プラットフォーム
まずは社内の部署やチーム、個々の社員がどのようなスキルや情報、ノウハウを持っているのかを見える化し、必要なときに迅速に連携できる仕組みを作ります。社内Wikiやプロジェクト管理ツールなどを駆使し、情報が個人や部署で閉じないようにすることがポイントです。
(2) 社外連携プラットフォーム
オープンイノベーションを実践するためのネットワークやコミュニティに参加し、課題やリソースを共有する場を設ける企業が増えています。たとえば「こんな技術が足りない」「こんなデータを活用できる企業を探している」と発信すれば、思わぬコラボレーションが生まれるきっかけになるでしょう。
―――――――――――――――――
3. エコシステム時代のマネジメント
(1) リーダーの役割
従来の管理型リーダーシップではなく、多様なリソースを「どうつなぐか」を考え、環境を整える調整役が求められます。社内外の人々が協力しやすいように橋渡しをする「コネクター」の存在が、エコシステム成功のカギを握ります。
(2) 柔軟性を備えた組織デザイン
エコシステムは環境の変化に合わせてメンバーや外部パートナーとの連携も変わっていきます。固定化された部署や上下関係だけではなく、プロジェクトベースでチームを編成したり、必要に応じて外部専門家を呼び込むなど、状況に合わせて組織形態を変化させる柔軟性が重要です。
―――――――――――――――――
4. 具体的アクション
(1) 小規模コラボから始める
いきなり大掛かりな連携や投資をするのではなく、小さなコラボプロジェクトや勉強会、共同研究から始めるのがおすすめです。成功体験を積み重ねることで、社内外の信頼やネットワークを着実に広げられます。
(2) 成果と失敗の共有
エコシステム内では、成功事例だけでなく失敗事例や試行錯誤の過程も共有することで、参加者全体の学習効果を高められます。これにより、別のプロジェクトで同じミスを回避できたり、新たなアイデアが生まれたりするわけです。
―――――――――――――――――
まとめ
5つのリソース(ヒト、モノ、カネ、情報、時間)をそれぞれ最適化するだけでなく、エコシステムとして有機的に組み合わせることで、大きなイノベーションが期待できます。特に、社外も巻き込んで「競争から共創へ」の発想を取り入れる企業や組織が増えている今、いかに連携の場を設計するかが成功のカギになるでしょう。
この5回シリーズで紹介した内容を、自社や自分自身の活動に当てはめて考えてみることで、思わぬアイデアや改革のヒントを得られるかもしれません。未来をつくるために、ぜひ一歩踏み出してみてください。