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【完全版】第6回:デザイン思考の5段階プロセス/テスト(Test)とは?

ユーザーの声を活かして改善するプロセス
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1. はじめに

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こんにちは!この連載ではデザイン思考の5段階プロセスを順に解説していますが、今回の第6回は「テスト(Test)」を取り上げます。前回の「試作(Prototype)」でアイデアを形にし、実際に触れられるプロトタイプを作ったら、今度はそれをユーザーに実際に試してもらう段階です。

私自身、ファッション、飲食、建築、エステサロンなどの事業を手掛けるかたわら、都内IT企業の顧問や海外投資家の日本進出を支援するコンサルティングを行っています。そこで感じるのは、どんなプロダクトやサービスでも、最終リリース前にいかにユーザーの声を集められるかが成功の大きな分岐点になるということ。テストをしっかり行い、得られたフィードバックを改良につなげられる組織こそ、最終的に高品質な成果物を生み出せるのです。

今回は「テスト」とはどんな工程なのか、その重要性や進め方、実際のビジネス事例から学べるポイントなどを詳しく解説していきます。

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2. テスト(Test)とは?

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2-1. ユーザーに試作品を使ってもらい、改良点を見極める


テスト(Test)とは、試作品を想定するユーザーに実際に使ってもらい、リアルな感想や使い勝手を確かめる工程です。試作品がユーザーの期待に応えられているか、本質的な課題を解決しているか、操作性に問題はないか――こういった点を具体的に洗い出すのが狙いです。
なお、テストに使用するのは必ずしも完成品ではなく、試作品のままでも問題ありません。重要なのは「ユーザーが体験できる形」であれば十分という点です。

2-2. 重要な問いかけ:本当に課題を解決できているか?


テスト段階では、以下の問いが中心となります。
• 試作品はユーザーの課題を解決しているか?
• 使いやすさ、見やすさ、分かりやすさは十分か?
• 思わぬ問題点や不便さはないか?
• 他に欲しい機能や要素は何か?

これらを明確化することで、さらに改良を加えるべきポイントや、新たなインサイト(発見)が見えてきます。

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3. テストが重要な理由

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3-1. 実際の使用感を把握できる


自分たちで検討しているだけでは見落とすような問題も、ユーザーの生の反応によって浮き彫りになります。ファッションなら「着てみると袖が動きづらい」、飲食なら「実際に食べると味付けが濃い」、ITなら「画面操作が分かりづらい」といった声は、使ってもらわないと気づけないことが多いです。

3-2. 早期改善によるコスト削減


リリース後に大幅な変更が必要になるより、試作段階でテストを行い、修正点を把握しておけば大きなコストの浪費を防げます。テスト段階の失敗や問題発見は「安い学習コスト」として捉えられるのがデザイン思考の強みです。

3-3. ユーザーとの共創


テストは単なる「評価」ではなく、「ユーザーと一緒に作り上げる」過程でもあります。実際に使ったユーザーの声を取り入れることで、完成形により説得力が増しますし、ユーザーとしても「自分たちの意見が反映される」という愛着や応援意識が育ちやすいです。

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4. テストプロセスの進め方

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4-1. テスト計画の立案(ターゲット選定・場所・検証項目)


まずは、誰にテストを依頼するのか、どのような環境で使ってもらうのか、どの部分を重点的に評価してもらうかを決めます。
例:ベビーカーのテストなら、実際に子育て中の親に公園やショッピングモールで使ってもらうなど、現実的な使用シーンを想定することが重要です。

4-2. 試作品の準備(必要な機能だけを用意)


テスト用の試作品は、その目的に合った機能や要素だけを盛り込んだものでも大丈夫です。たとえば、「UI(ユーザーインターフェース)のみテストしたい」なら、バックエンドはダミーでOKというアプローチもあります。

4-3. 実際のテストと観察


ユーザーに試作品を実際に使ってもらい、その様子を観察します。どんな操作や行動をし、どこで戸惑いを見せるのか、どんな表情で使っているかなど、細かい部分が貴重な情報源です。また、口頭で意見をヒアリングするのも重要ですが、本人が意識しないで行っている行動(無意識の戸惑いなど)を掴むためにも、観察は欠かせません。

4-4. フィードバックの分析


集まった意見や感想を整理して、どんな改良が必要かをまとめます。ここで大切なのは、「何が良くて何が悪いか」という表面的な評価だけでなく、「ユーザーはなぜそう感じたのか?」という背景や理由を深堀りすることです。エステサロンの施術メニューをテストしたときも、「説明を聞いて理解してもらったつもりでも、実際には戸惑っていた」というケースがありました。言葉だけでなく体験全体を見直すきっかけになりました。

4-5. 反復プロセスへの移行


テストの結果をもとに試作品をアップデートし、再度テストを行う。このサイクルを何度も繰り返すことで、アイデアはよりユーザーにフィットした完成形へ近づいていきます。IT企業のアプリ開発でも、リリース前に何度もユーザーテストを実施し、UI/UXを磨き上げるのが一般的です。

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5. ビジネス現場でのテスト活用例

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このラインより下のエリアがnoteでは有料で表示されます。

5-1. スターバックス:小規模テストでドリンクをブラッシュアップ


スターバックスでは、新メニューをいきなり全店舗で導入せず、一部の地域や特定の店舗で限定販売することが多いです。そこで顧客の反応を確かめ、味の調整やプロモーション手法を洗練させてから本格展開に踏み切ります。こうした小規模テストは、リスクを最小化しながらユーザーの生の声を収集できる有効な手段です。

5-2. ベビーカー開発:実際の使用状況から課題抽出


ある企業が新型ベビーカーを開発する際、実際の親御さんに数週間使ってもらい、その移動シーンを観察。折りたたみのしやすさや荷物収納の利便性など、多様な課題が浮上しました。最終的にはユーザーのリアルな意見をもとに改良を重ねた結果、市場で高い評価を得るベビーカーをリリースできたそうです。

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6. 私の事業経験における「テスト」の実践

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私がファッションや飲食、建築、エステ、IT企業の顧問、そして海外投資家向けコンサルを行う中で、「テスト」の重要性を感じた具体的なエピソードをいくつかご紹介します。

6-1. ファッション:サンプル最終チェックで顧客視点を反映


ファッションの商品企画では、サンプルウェアを作って試着会を行うところまでは「試作」フェーズ。そこでスタッフや顧客モデルに着てもらい、さらに普段着のように動いたり座ったりしてもらう「テスト」を実施します。そこでは「動きづらさ」「色の見え方」「洗濯後のシワ具合」など、リアルな使用感が浮き彫りになります。こうしたフィードバックが最終デザインの完成度を大きく左右するのです。

6-2. 飲食:新メニューの限定提供とフィードバック収集


飲食店なら、新メニューをいきなりレギュラーメニューに加える前に限定提供し、お客様の反応や売れ行きを観察する「テスト」を行います。「想定外にニーズが高いメニューがあった」「意外とコストが掛かりすぎた」などの知見を得られ、次の改善や投入タイミングの調整に活かします。これはまさにスモールスタートでユーザーの声を拾うデザイン思考的アプローチです。

6-3. 建築・エステ・ITでのユーザーテスト


建築プロジェクトでは、完成前に施主やユーザーが実際のモデルルームを体験し、動線や視野の印象を確認する「テスト」を行うケースが一般的。エステサロンでも新コースの体験モニターを募集し、「ベッドの高さが合わない」「オイルの香りが強すぎる」といった細部にわたるリアルな感想を得ています。IT企業のアプリ開発でもβ版をユーザーに使ってもらい、使い勝手やデザインの印象をテストして調整を繰り返すのが定番です。

6-4. 海外投資家向けコンサル:小規模PoC(概念実証)でリスクを減らす


海外投資家が日本で新規事業を始める際、いきなり大規模に展開するのではなく、少数地域や小さなイベントでテスト販売を行う「PoC(Proof of Concept:概念実証)」を勧めることがあります。ここでユーザーや市場の反応を見ながら修正を重ねることで、投資リスクを抑えながら成功確率を高める。まさにテストの考え方がベースになっているわけです。

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7. テスト成功へのポイント

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7-1. ターゲット選定


フィードバックを受ける際に、製品やサービスのメインユーザー層からの意見を重視することが大切です。ターゲット外の人からの意見も参考になりますが、最終的に「誰のための製品か?」を忘れないようにするのがポイント。方向性がブレるリスクを防げます。

7-2. 批判ではなく洞察を重視


ユーザーがネガティブな感想を言うとき、つい「それは使い方が間違っている」と反論したくなるかもしれません。しかし、デザイン思考ではそこから「なぜそう感じたのか?」を深掘りして学びにつなげる姿勢が欠かせません。批判をただ受け止めるのではなく、その裏にある洞察を見つけることが大切です。

7-3. 迅速な反復


テストは一度で終わりではなく、改良→再テストを繰り返すほど完成度が高まります。ファッションでも建築でも、少しずつ修正を重ねることで、思ってもみなかった新しいアイデアが生まれることも少なくありません。反復のスピードと回数がイノベーションの質を大きく左右します。

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8. まとめと次回予告

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第6回では「テスト(Test)」フェーズについて詳しく解説しました。前回の「試作(Prototype)」で生まれた仮の形を、実際にユーザーが使ってみることで、初めて気づく課題や改善点が山ほどあります。まとめると、テストの重要なポイントは以下の通りです。

• テストはユーザー視点を取り入れるための最重要ステップ
• 実際に使用してもらうからこそ、想定外の問題や改良点が見えてくる
• 批判を否定的に捉えず、洞察(学び)として活かす
• 迅速かつ繰り返しの反復で完成度を高める

私自身の経験から言えば、テストを丁寧に実践している事業ほど、最終リリース時点で大きな“ハズレ”が少なく、ユーザー満足度の高いサービスを提供できる印象があります。ファッション・飲食・建築・エステ・ITなど、どの業界でも共通する「人間中心」のアプローチこそが、デザイン思考のエッセンスだと改めて感じます。

次回(第7回)は、「デザイン思考全体の振り返りと実践への応用」をテーマに進めます。5つのプロセスをどう統合し、実際のビジネスやプロジェクトで活用していくかを総括的に解説する回となりますので、ぜひお楽しみに。

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(約10,000文字)

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。テスト(Test)はデザイン思考の仕上げと言っても過言ではなく、ユーザーと共創する感覚を最も強く味わえるフェーズです。次回は、この全ステップの振り返りとさらに一歩先を行く実践のヒントをお伝えしますので、引き続きご覧ください。

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