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【経営戦略】「定番商品」の数と優良経営の相関関係|安定収益を生む商品ポートフォリオの作り方

この記事のポイント

この記事では、経営学の理論から最新のD2C(Direct to Consumer:直接消費者販売)事例まで幅広く調査し、「定番商品の数」と「事業成長」の関係性を紐解いていきます。McKinsey & Companyの研究では、SKU(Stock Keeping Unit:在庫管理単位)数を25%削減した企業の粗利益が2〜4%も改善したことがわかっています。また、選択のパラドックス理論では、24種類から6種類への絞り込みで購入率が30倍に向上することが明らかになりました。

73%
売上の73%は上位20%の商品から生まれます(パレートの法則)
3-7個
中小企業が持つべき定番商品の最適数
70%
定番商品で構成すべき売上比率

BCGマトリックスが示す定番商品の財務的役割

定番商品は経営学で「Cash Cow(金のなる木)」と呼ばれています。1970年にボストン・コンサルティング・グループのBruce D. Hendersonが提唱したBCGマトリックスでは、市場成長率が低くても高いシェアを持つ製品は「維持コスト以上のキャッシュを生み出してくれる」と説明されています。

商品ライフサイクル理論で見ると、定番商品は「成熟期」にあり、最も収益性が高い段階です。Theodore LevittがHarvard Business Reviewで発表した研究(1965年)によれば、この成熟期をいかに長く保つかが経営の鍵になっています。

「定番商品は、企業が積み重ねてきた知恵や学習の結晶です。定番商品を軽視してしまうと、企業の核となる強み(コア・コンピタンス)が失われてしまうことになります」

パレートの法則と選択のパラドックス:数字が語る真実

売上の73%は20%の商品から

Kim, Singh & Winerの研究(2017年)では、米国50州・10万世帯以上・6年間の消費財データを分析しています。その結果、平均パレート比率は0.73。つまり、売上の73%が上位20%の商品から生まれているんです。

業種 パレート比率
消費財(CPG) 0.73
製品企業全般 0.67
サービス企業 0.66
サブスクリプション企業 0.59

選択肢を減らすと購入率が10倍に

Barry Schwartzが著した「The Paradox of Choice(選択のパラドックス)」(2004年)では、選択肢が多すぎると消費者が決められなくなることを示しています。その代表的な研究がジャム実験(Sheena Iyengar & Mark Lepper, 2000年)です。

選択肢数 試食した客の割合 実際の購入率
24種類 60% 3%
6種類 40% 30%

選択肢が多いと目を引くものの、実際の購入には結びつきにくいんです。6種類に絞った条件では購入率が10倍に跳ね上がりました。実際、P&GはHead & Shouldersシャンプーを26種類から15種類に削減したところ、売上が増加し、収益も10%向上しています。

SKU削減が利益率を劇的に改善する

McKinseyの衝撃的なデータ

McKinsey & Companyの研究(2016年)では、北米の食品メーカーがSKU数を25%削減したところ、粗利益が2〜4%改善し、生産ラインの切り替え時間も短縮、サプライチェーン(供給網)の柔軟性も向上したことがわかっています。

効果項目 期待改善値
純売上高 1〜4ポイント増
マージン改善 3〜6ポイント
資産生産性向上 10〜25%

BCG/GMAの調査(2013年)では、米国の消費財業界全体で不要な複雑性により160〜280億ドルもの利益が失われていると推計されました。実際、Unileverは2023年にSKUを17%削減したところ、2024年に粗利益が280ベーシスポイント(2.8%)も改善しています。

世界の成功企業が実践する「少数精鋭」戦略

Costcoの4,000SKU戦略

Costcoが取り扱うのは約4,000品目だけです。一般的なスーパーの30,000〜50,000品目と比べると10%以下、Amazonの100,000品目以上と比べても圧倒的に少ない品揃えです。

指標 Costco
SKU数 約4,000
商品マークアップ上限 14〜15%
会員更新率(米国/カナダ) 92.7%
会員費収入(2023年) 46億ドル
1店舗あたり平均売上 約2.6億ドル

In-N-Out Burgerの究極の絞り込み

1948年の創業以来、基本メニューはハンバーガー3種類、ポテト、ドリンクだけでほぼ変わっていません。その成果は数字が物語っています:

指標 In-N-Out McDonald’s比較
1店舗あたり年間売上 約$450万 $260万(1.7倍)
EBITDA margin 約20% 8-10%(2倍以上)

創業者Harry Snyderの「Do one thing, and do it well(一つのことを、とことん良くやる)」という信念を守り続け、全店舗直営、冷凍庫は使わない、パティ製造施設から500マイル以内でのみ出店するという徹底ぶりです。

日本企業に学ぶ「不変×可変」の法則

420年続く養命酒の秘訣

養命酒は1602年の創製以来、14種類の生薬とアルコールによる配合レシピを420年間守り続けています。でも、パッケージデザインは時代に合わせて微調整し、新商品開発や革新的なマーケティングも行っています。「変えすぎないこと」—これが既存顧客の期待に応え続け、420年も愛される秘訣なんです。

UNIQLOの機能性定番戦略

ヒートテックは2003年の発売後、4年かけて品質を改善し、2007年に大ヒット。累計販売枚数は15億枚以上にもなります。東レとの戦略的提携による素材開発、「LifeWear」というコンセプト、SPA(製造小売業)モデルで「高品質なのに低価格」を実現しています。

「日本企業と海外企業では、アプローチが違います。日本企業は『変えないことへのこだわり』と『感情や文化に訴えるストーリー』を大切にするのに対し、海外企業は『オペレーションの効率化』と『数字で測れるKPI(重要業績評価指標)での管理』を重視する傾向があります」

消費者が「定番」を求める心理学的メカニズム

選択疲れと認知負荷軽減

Journal of Consumer Psychologyの研究では、消費者は7〜9個以上の選択肢を比較すると頭が疲れてしまい、購入後の満足度も下がることがわかっています。Harvard Business Reviewの研究(2012年)でも、リピート購入や口コミに最も影響するのは「意思決定の簡単さ」だったそうです。

定番商品があると「いつものあれ」と深く考えずに選べるので、他の大切な判断に頭を使えます。実は、私たちの日常行動の約45%は習慣で自動的に行われているんです。

中小企業・個人事業主が実践すべき定番戦略

業種 最重要ポイント
美容サロン 推しメニューを1つに絞り、価格競争を避ける
飲食店 上位20%のメニューを強化、売上70%を定番で構成
小売店 売れ筋商品と新商品の効果的な陳列
士業 専門分野を明確化し、パッケージ化されたサービスを提供

定番商品選定チェックリスト

  • 売上への貢献度が高い(ABC分析でAランク)
  • 利益率が適切である
  • 他店との差別化要素がある
  • 店舗コンセプトと合致している
  • 安定した品質で提供できる
  • 顧客からの評価・口コミが良い
  • リピート注文が多い

理想的なバランスは、定番商品70%以上、新商品・季節商品30%以下です。定番メニューを年4回ほど見直しながら、「今月のおすすめ」で新鮮さも加えている企業が、安定した成長を続けています。

結論:「定番」は経営の推進力、推進力が無いから停滞する

この調査からわかったことは明確です。定番商品の最適数は3〜7個。認知心理学の「マジックナンバー7±2」、選択のパラドックス研究、そして実際の成功企業の事例が、この数字の正しさを示しています。

定番商品で売上の70%以上を作る—パレートの法則が示す「73%が上位20%から生まれる」という数字が、定番商品を収益の柱にする戦略の正しさを証明しています。McKinseyのデータでも、SKU削減で粗利益が2〜4%改善することがわかっています。

「ABC分析で売上データを見える化し、売れていないSKUは段階的に減らし、選び抜いた定番商品に集中投資する——この3つのステップが、今日から始められる経営改善の第一歩です」

「何でもやる」より「これだけは負けない」を作ること—それが、持続可能な成長への近道です。養命酒の420年、カルピスの100年が教えてくれるのは、本質的な価値は変えず、見せ方や売り方は時代に合わせて変えていくこと。この「変えないもの×変えるもの」のバランスこそが、長く愛されるブランドを作る秘訣なんです。

あなたのビジネスの「定番」は何ですか?

DEARS CONSULTINGでは、短期的な売上だけでなく、長期的な世の中の流れを見据えながら、企業がどのポジションにいることが最善なのかを一緒に考えます。データと実践知を組み合わせた定番商品戦略の策定から実行まで、企業が長く成長し続けるための意思決定を支援しています。

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