
「企業経営に必要な5つのリソース(ヒト、モノ、カネ、情報、時間)」をテーマにした全5回の連載記事 【第2回】時間をデザインする:5つのリソースを操る鍵としてのタイムマネジメント
Contents
【第2回】時間をデザインする:5つのリソースを操る鍵としてのタイムマネジメント
はじめに
企業経営であれ、個人のキャリアであれ、「時間が足りない」と感じることはよくあります。何か新しいアイデアを試したい、もっと学習や研究に時間をかけたいと思っても、日常業務に追われてしまう。そんな経験をした人も多いのではないでしょうか。
今回は、「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」と合わせて考えるうえで、時間をどのようにマネジメントすれば、より高い成果やイノベーションを生み出せるのか、そのポイントを解説していきます。
―――――――――――――――――
1. 時間はなぜ特別なのか
(1) 後から取り戻せないリソース
ヒトは採用や外部パートナーを活用して増やせる場合がありますし、モノは新たに購入できます。カネも投資や融資で集めることができるし、情報も学習やリサーチで獲得可能です。しかし、「時間」は一度失うと取り戻すことができません。ここに時間の最大の特徴があります。
(2) 24時間の使い方次第で大きく差がつく
学生時代でも、同じ1日24時間でも勉強や部活の練習を効率よくこなす人ほど成果を上げやすいですよね。ビジネスでも、どの業務にどのくらい時間を割くか、コミュニケーションや会議の時間をどう最適化するかで大きく結果が変わります。
―――――――――――――――――
2. 時間をデザインする三要素
(1) 可視化
まずは、誰がどんな業務や作業にどの程度の時間を使っているのかを見える化します。プロジェクト管理ツールや、シンプルなスケジュール表でも構いません。「会議」「メール返信」「商品開発」「営業対応」などを細かく時間別に記録していくと、どこで無駄が発生しているのかが見えてきます。
(2) 最適化
可視化で浮き彫りになった無駄や重複を削減し、業務プロセスを整えます。たとえば、定例会議の頻度を下げてSlackなどのチャットツールで完結させる、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツールで繰り返し作業を自動化するなどです。
(3) 創造化
最適化によって生まれた余白を、イノベーションや新しいビジネスアイデアに使う考え方です。忙しいときには全く目が向かなかった課題に着手したり、スキルアップやチームビルディングに時間を充てたりすることで、組織や個人の成長を加速させられます。
―――――――――――――――――
3. 5つのリソースとの交点
(1) ヒト × 時間
リモートワークやフレックス制度などで、社員の生活リズムや得意な時間帯に合わせて働けるようにすると、パフォーマンスが向上しやすい。逆に、全員に一律の働き方を強いると、モチベーションや成果が下がる可能性があります。
(2) モノ × 時間
製造業や物流業でのリードタイム短縮が代表的な例です。顧客にできるだけ早く製品やサービスを届ける体制を作ることで、売上拡大や顧客満足度向上につながります。
(3) カネ × 時間
投資のタイミングが遅れると、ビジネスチャンスを逃すことになりかねません。キャッシュフローや資金繰りのスピードを意識し、早めに判断・行動することで市場の波に乗りやすくなります。
(4) 情報 × 時間
データ分析や意思決定をリアルタイムで行えるようにすれば、市場や顧客の変化に素早く対応できます。情報は更新され続けるので、それを使いこなす「スピード感」こそが競合優位を生むのです。
―――――――――――――――――
4. 実践アイデア
(1) 会議時間の徹底見直し
会議を短時間で済ませるための議題設定、アジェンダ共有、資料事前配布などを徹底し、ミーティング自体を効率化する。場合によっては「10分会議」「立ったまま会議」などにチャレンジする企業もあります。
(2) 週1回のノー会議デー
一切の会議を入れない日を作り、社員が作業に没頭できる時間を確保する。集中力の高い時間を意図的に生み出すことで、業務効率が大幅に改善するケースがあります。
―――――――――――――――――
まとめ
時間は誰にとっても平等に与えられたリソースですが、使い方次第で結果は大きく変わります。可視化・最適化・創造化のステップを回すことで、企業も個人も高いパフォーマンスを実現できるでしょう。
次回は、「情報」と「ヒト」が互いに育ち合う好循環をどのように作り出せるかを探ります。ビッグデータやAIの活用が叫ばれる一方で、その成果を左右するのは結局は人材の力です。組織が情報と上手につき合うポイントを解説します。