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ECで25億まで来た社長が、初出店で気づいた「実店舗は何のためにあるのか」

ECで25億まで来た社長が、初出店で気づいた「実店舗は何のためにあるのか」

ECで順調に成長してきたのに、なぜ店舗を出すことになったのか

ECサイトの売上が毎年順調に伸び、気がつけば年商25億円まで成長していた。数字だけ見れば、誰もが羨む成功ストーリーです。

しかし、ここ1〜2年で見えてきた現実があります。広告費は年々高騰し、新規顧客獲得コストは3年前の1.5倍以上に。利益率は徐々に圧迫され、「このままでいいのか」という疑問が頭をよぎる瞬間が増えてきました。

そんな中で浮上したのが実店舗の話でした。「お客様との接点を増やしたい」「ブランド体験を提供したい」「広告に依存しない集客チャネルが欲しい」——理由は明確だったはずです。

ところが、いざ物件を決めて内装を考え始めたとき、ふと手が止まりました。「実店舗は何のためにあるのか」という、根本的な疑問が湧いてきたのです。

ECと実店舗では、顧客の行動が根本的に違う

ECサイトでは、顧客の行動パターンがある程度見えています。検索→商品ページ閲覧→カート追加→決済、という一連の流れ。コンバージョン率や離脱ポイントもデータで把握できます。

しかし実店舗では、顧客の行動は全く違います。何となく入店し、商品を手に取り、店員と会話し、時には何も買わずに帰る。ECのような明確な購買動線は存在しません。

この違いを理解せずに「ECの延長」として店舗を考えていたとしたら、おそらく期待した成果は得られないでしょう。店舗には店舗独自の役割があり、それはECでは提供できない価値のはずです。

では、その価値とは一体何なのでしょうか。

「売る場所」ではなく「体験を提供する場所」という発想転換

多くの経営者が陥りがちなのが「店舗=売る場所」という固定観念です。確かに売上も大切ですが、店舗の真の価値はもっと別のところにあるかもしれません。

例えば、こんな体験を提供する場所として考えてみてはどうでしょうか。

  • 商品の背景にあるストーリーを伝える場所:ECサイトでは文字と画像でしか伝えられない、商品に込めた想いや開発秘話を、スタッフが直接語る
  • 使用感を実際に確かめてもらう場所:テクスチャーや重量、サイズ感など、ECでは伝わりにくい要素を体感してもらう
  • コミュニティの拠点:既存顧客同士が交流し、新しい使い方や楽しみ方を発見できる空間
  • ブランドの世界観を体現する場所:内装、音楽、香り、スタッフの接客まで含めて、ブランドが大切にしている価値を五感で感じてもらう

このように考えると、店舗の役割は「その場での売上」よりも「ブランド資産の蓄積」にあることが見えてきます。

店舗体験がECの購買行動に与える影響

実店舗での体験は、意外なところでECの売上にも影響を与えます。

店舗で商品を手に取り、スタッフと会話した顧客は、帰宅後にECサイトで購入する確率が高くなる傾向があります。また、一度店舗を訪れた顧客は、その後のECでのリピート率も向上するケースが多いのです。

つまり、店舗の成果を「店舗売上」だけで測ってしまうと、真の価値を見落とすことになります。店舗とECを連携させた全体の売上、顧客のLTV(生涯価値)、ブランドへの愛着度といった指標で評価する必要があるでしょう。

この視点に立つと、店舗のコンセプトや運営方針も大きく変わってきます。

店舗スタッフの役割を再定義する

ECメインで成長してきた企業にとって、店舗スタッフのマネジメントは新しい挑戦です。ECサイトには「接客」という概念がありませんから、スタッフに何を求めるべきかが見えにくいのも当然です。

しかし「体験を提供する場所」として店舗を位置づけるなら、スタッフの役割も明確になります。彼らは単なる「販売員」ではなく、「ブランドアンバサダー」なのです。

商品知識はもちろんですが、それ以上に大切なのは、ブランドの価値観や想いを自分の言葉で語れること。そして、顧客の話を聞き、その人にとって最適な提案ができることです。

このような人材を育てるには、ECとは全く違うアプローチが必要です。数字だけでなく、顧客との関係性やブランドへの理解度も評価指標に含める必要があるでしょう。

データと感性の両方で店舗を運営する

ECで成功してきた経営者は、データドリブンな経営に慣れています。しかし店舗運営では、データだけでは捉えきれない要素も多分にあります。

来店客の表情、滞在時間、手に取った商品、スタッフとの会話内容——これらすべてが店舗の価値を創り出しています。数値化しにくい要素ですが、だからこそ競合との差別化につながる可能性も秘めています。

一方で、ECで培ったデータ分析力も十分活用できます。顧客の購買履歴と店舗での行動を紐づけることで、より精度の高い接客が可能になるかもしれません。

大切なのは、データと感性のバランスです。数字を見つつも、現場の肌感覚を大切にする。これがEC出身の経営者にとっての新しいチャレンジになるでしょう。

長期的なブランド戦略の一環として店舗を位置づける

「実店舗は何のためにあるのか」という問いに対する一つの答えは、ブランド戦略の中核に置く、ということかもしれません。

価格競争から脱却し、定価でも選ばれるブランドになるためには、顧客との深い関係性が欠かせません。そしてその関係性を築く最も効果的な場所が、実店舗なのです。

短期的には店舗の採算が厳しいかもしれませんが、中長期的にはブランド価値の向上、顧客ロイヤルティの強化、広告依存からの脱却といった形で、必ず効果は表れるでしょう。

そう考えると、店舗への投資は単なるコストではなく、ブランド資産への投資として捉えることができます。

明日から一つだけ始められること

もしあなたも実店舗の検討を始めているなら、まず「この店舗で顧客にどんな体験をしてもらいたいか」を言語化してみてください。

売上目標や坪効率も大切ですが、その前に「顧客がこの店舗を訪れることで、どんな気持ちになってほしいのか」「どんな価値を持ち帰ってほしいのか」を明確にする。これが全ての出発点になるはずです。

ECで培った顧客理解力があれば、きっと顧客が求める体験も見えてくるでしょう。そしてその体験を提供できたとき、実店舗は単なる販売チャネルを超えた、かけがえのない価値を生み出すに違いありません。


DEARS CONSULTING 前田正浩
企業の「規模ではなく不可欠な存在に変わる経営戦略」を発信しています。
note でも実例ベースの話を続けています。 → noteをフォローする

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