デザイナーを雇えない中堅企業が、大手と同じ「選ばれる印象」を作り出している意外な方法
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「うちの資料、なんか安っぽく見えるよな…」
展示会で隣のブースを見ながら、そうつぶやいたことはありませんか。同じような商品を扱っているのに、向こうは洗練されたパンフレットやディスプレイで多くの人を引きつけている。一方、自社のブースには足を止める人がまばら。
「やっぱりデザイナーを雇うべきなのか」そんな考えが頭をよぎります。でも現実的に考えて、年商数億から数十億の中堅企業が、専任のデザイナーを雇うのはなかなか難しいもの。外注するにしても、毎回依頼するコストを考えると二の足を踏んでしまいます。
ところが最近、専任デザイナーがいない中堅企業でも、大手企業と見劣りしない「選ばれる印象」を作り出している会社が増えています。彼らは一体、どんな方法を使っているのでしょうか。
「統一感」という名の見えないデザイン力
答えは意外にシンプルでした。彼らが実践しているのは、徹底した「統一感」の管理です。
ある年商15億円の製造業A社の例を見てみましょう。この会社には専任デザイナーはいません。それでも、名刺から会社案内、ウェブサイト、展示会のブース、営業資料まで、すべてが一貫した印象を与えています。
秘密は「ブランドガイドライン」と呼ばれる1枚のシートにありました。そこには、使用する色(メインカラー1色、サブカラー2色)、フォント(日本語・英語各1種類)、ロゴの使用ルール、写真のトーンが明確に定められていたのです。
「最初は面倒だと思いましたが、これがあると誰が作っても会社らしい仕上がりになるんです」とA社の経営企画室長は話します。実際、営業担当者が PowerPoint で作った提案資料も、事務スタッフが作成した採用パンフレットも、同じブランドガイドラインに従うことで、統一感のある仕上がりになっていました。
「作らせる」から「選ばせる」への発想転換
もう一つの重要なポイントは、制作プロセスの標準化です。
多くの中堅企業が陥りがちなのは、「ゼロから作る」という発想です。パンフレットが必要になるたびに、レイアウトから考え始める。ウェブサイトを更新するときも、毎回デザインを一から検討する。これでは統一感が生まれないばかりか、時間とコストもかかってしまいます。
成功している企業は、この発想を180度転換しています。彼らは「テンプレート」と「素材ライブラリ」を整備しているのです。
年商25億円のサービス業B社では、よく使う資料パターンを10種類のテンプレートにまとめました。企画書、提案書、実績紹介、会社概要など、用途別に最適化されたレイアウトです。写真素材も、自社で撮影したものを中心に200枚程度をライブラリ化。スタッフは「作る」のではなく「選んで組み合わせる」だけで、プロレベルの資料を短時間で完成させています。
「以前は資料作成に丸一日かかっていましたが、今では2時間程度。しかも仕上がりは格段に良くなりました」と同社の営業部長は満足そうに話します。
外部パートナーとの「長期的な関係」構築
「でも、最初のテンプレートやガイドラインは誰が作るの?」という疑問が湧くかもしれません。
ここで成功企業が実践しているのが、外部パートナーとの長期的な関係構築です。専任で雇うのではなく、信頼できるデザイナーやデザイン会社と継続的な契約を結ぶのです。
先ほどのA社も、最初のブランドガイドラインとテンプレート一式の制作を、地元のデザイン会社に依頼しました。初期費用は120万円程度でしたが、その後は月2〜3万円の顧問契約で、新しいテンプレートの追加や素材の更新をサポートしてもらっています。
「専任デザイナーを雇うなら年間500万円以上かかります。でも今の方式なら年間50万円程度。コストパフォーマンスは圧倒的に良いですね」とA社の社長は言います。
重要なのは、単発の制作依頼ではなく、継続的なパートナーシップを築くこと。デザイナー側も会社のことを深く理解してくれるため、より効果的な提案をしてくれるようになります。
社内の「デザイン意識」を底上げする
しかし、テンプレートやガイドラインがあっても、それを使う社員の意識が低ければ効果は半減してしまいます。
成功している企業は、社内の「デザイン意識」の底上げにも力を入れています。
年商40億円の商社C社では、四半期に一度、全社員を対象とした「ブランドワークショップ」を開催しています。内容は難しいデザイン理論ではありません。「なぜ統一感が大切なのか」「お客様にどんな印象を持ってもらいたいのか」といった、ブランドの基本的な考え方を共有する場です。
「最初は『面倒な研修が増えた』と思われていましたが、今では多くの社員が積極的に参加してくれます。自分の作った資料でお客様の反応が良くなったという体験を重ねることで、みんなの意識が変わってきました」と同社の広報担当者は話します。
実際、営業成績にも変化が現れています。提案書のクオリティが向上したことで、同じ内容でも採用率が2割程度アップ。「見た目で選ばれる」効果を、数字で実感できるようになったのです。
「ブランドは大手企業のもの」という思い込みを捨てる
なぜ、これらの中堅企業は「統一感」に注目したのでしょうか。
背景にあるのは、顧客の購買行動の変化です。情報があふれる現代において、お客様は「信頼できそうな会社」を瞬時に判断する必要に迫られています。その判断材料の一つが「見た目の印象」なのです。
「商品やサービスの質で勝負したい」という気持ちは理解できます。しかし残念ながら、質を判断してもらう前に「信頼できそう」と思ってもらえなければ、検討の土俵にすら上がれません。
「ブランドは大手企業のもの」という思い込みを捨て、「自社らしさを一貫して伝える」ことに焦点を当てる。それだけで、お客様からの見られ方は大きく変わります。
明日からできる最初の一歩
では、具体的に何から始めればよいでしょうか。
まずは、現在使用している営業ツールを並べてみることをお勧めします。名刺、会社案内、ウェブサイト、提案書テンプレート。それらを客観的に見て、「同じ会社が作ったもの」として統一感があるかを確認してみてください。
もし統一感が不足していると感じるなら、最低限以下の3つの要素を決めることから始めましょう:
- メインカラー(会社を代表する色)1色
- 使用するフォント(日本語・英語各1種類)
- ロゴの使用ルール(サイズ、配置、背景色)
これらを決めるだけでも、今後作成する資料の統一感は格段に向上するはずです。
そして何より大切なのは、「自社は顧客にとって、どのような存在でありたいのか」を明確にすること。信頼感なのか、親しみやすさなのか、革新性なのか。その答えが、すべてのデザイン判断の基準となります。
専任デザイナーがいない中堅企業でも、工夫次第で「選ばれる印象」は作り出せる。大切なのは、完璧を求めることではなく、一貫性を保つことなのかもしれません。
DEARS CONSULTING 前田正浩
企業の「規模ではなく不可欠な存在に変わる経営戦略」を発信しています。
note でも実例ベースの話を続けています。 → noteをフォローする