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年商30億を超えた瞬間、なぜ優秀だった管理職が次々と辞めていくのか

年商30億を超えた瞬間、なぜ優秀だった管理職が次々と辞めていくのか

「こんなはずじゃなかった」——30億の壁で見える現実

年商30億円。多くの中堅企業にとって、それは一つの大きな節目です。創業から10年、15年かけて築き上げてきた組織が、ようやく真の意味で「企業」と呼べる規模に到達した瞬間。

ところが、この節目を迎えた途端、思いもよらない事態に直面する経営者が少なくありません。これまで会社を支えてきた優秀な管理職たちが、まるで申し合わせたように次々と退職届を出し始めるのです。

「あいつがいなくなったら、この部門はどうなるんだ…」

そんな不安を抱えながら、なぜこのタイミングで彼らは会社を去るのか。実は、この現象には経営規模の拡大に伴う構造的な問題が潜んでいます。

「プレイングマネージャーの限界」が露呈する瞬間

年商30億を超える規模になると、組織は必然的に複雑化します。部門が増え、階層が生まれ、業務の専門性も高まる。そんな中で、これまで現場の第一線で活躍してきた管理職たちに求められる役割が、根本的に変わってしまうのです。

年商10億、20億の頃は、彼らは「スーパープレイヤー」として君臨していました。自分が最前線で数字を作りながら、部下の面倒も見る。技術的な問題があれば自分が解決し、クライアントの要望が複雑になれば自分が対応する。まさにプレイングマネージャーの鑑でした。

しかし30億の規模になると、マネージャーに求められるのは「プレイ」ではなく「マネジメント」そのものです。部下の育成、部門間の調整、中長期的な戦略の実行——これらの業務に専念しなければ、組織全体の成長が止まってしまう。

ところが、これまで「自分がやった方が早い」「自分がやった方が確実」という感覚で仕事をしてきた優秀な管理職にとって、この転換は想像以上に困難なのです。

見えない重圧:期待の質的変化

さらに厄介なのは、経営者からの期待の質が変わることです。年商30億の規模では、個人の成果よりも「組織の成果を最大化する能力」が重視されます。

例えば、営業部門のマネージャーを考えてみましょう。以前なら「今月も目標達成、お疲れさま」で済んでいたのが、今度は「来年の組織拡大プランはどうなっている?」「新人の定着率を上げるための仕組みは?」「他部門との連携体制は機能しているか?」といった、より複合的で長期的な課題について答えを求められるようになります。

この変化に適応できる管理職もいれば、「自分の得意分野で勝負したい」と感じる管理職もいる。後者の場合、組織の中での居場所に違和感を覚え始めるのは、ある意味自然な反応かもしれません。

「成長痛」を乗り越える組織づくりとは

では、この30億の壁をどう乗り越えるか。多くの企業が実践している対策の一つは、管理職の役割を明確に再定義することです。

ある製造業の企業では、年商30億を超えたタイミングで「マネージャー職の職務要件書」を全面的に見直しました。従来の「売上目標の達成」に加えて、「部下の成長支援」「他部門との連携促進」「中期戦略の実行」といった項目を明文化し、評価制度も合わせて変更したのです。

結果として、「何を期待されているのか分からない」という管理職の不安は大幅に軽減されました。また、新しい役割に魅力を感じる人材と、従来のスタイルを好む人材を早い段階で見分けることができ、適切な配置転換も可能になったといいます。

もう一つの重要な視点は、管理職のキャリアパスを複線化することです。すべての管理職が組織マネジメントの道を歩む必要はありません。高度な専門性を活かす「スペシャリスト管理職」の道を用意することで、優秀な人材の流出を防いでいる企業も増えています。

そもそも、何のために30億を目指したのか

しかし、制度面の改善だけでは根本的な解決にはならないかもしれません。最も大切なのは、経営者自身が「なぜ30億の規模を目指すのか」を明確にし、それを組織全体で共有することです。

売上拡大は手段であって、目的ではありません。30億の規模になることで、どんな価値を社会に提供したいのか。どんな働き方や企業文化を実現したいのか。その先に見える景色を、管理職を含めた全員が理解し、共感できているかどうか。

優秀な管理職が辞めていく本当の理由は、業務の変化や負荷の増大よりも、「この会社で働く意味」を見失うことにあるのかもしれません。経営者の描くビジョンと、管理職が抱く期待にギャップが生まれたとき、彼らは新しい可能性を求めて外に目を向け始めるのです。

明日からできる「一歩目」を考える

年商30億という節目は、組織にとって大きな転換点です。優秀な管理職の退職は、単なる人事的な問題ではなく、会社の成長戦略そのものを見直すシグナルかもしれません。

まずは、現在の管理職一人ひとりと時間をとって話をしてみてはいかがでしょうか。彼らが今、どんなことに悩み、何にやりがいを感じているのか。そして、会社の成長をどう捉えているのか。そこから見えてくる課題が、次の成長ステージへの道筋を示してくれるかもしれません。


DEARS CONSULTING 前田正浩
企業の「規模ではなく不可欠な存在に変わる経営戦略」を発信しています。
note でも実例ベースの話を続けています。 → noteをフォローする

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