代表のブログ

  1. HOME
  2. ブログ
  3. 代表のBlog
  4. 今日も忙しかった。でも、何が前に進んだんだろう。
今日も忙しかった。でも、何が前に進んだんだろう。

今日も忙しかった。でも、何が前に進んだんだろう。

売上目標は決まった。けれど、月曜日の仕事は変わらなかった。

会議も、営業も、お客様への説明も、去年と同じ。その上に「もう一割」が乗っている。訪問を増やそう。発信も増やそう。新しいサービスも考えよう。どれも間違ってはいないから、やることだけが増えていく。そして、予定に入りきらなかった仕事を、経営者が夜に引き受ける。

ここで「もっと覚悟を決めよう」と言われても、困ると思います。もう十分、自分の時間を使っているからです。私が見直したいのは、その覚悟ではありません。自社が欲しい結果は決めた。では、その結果につながるように、お客様の何を変えると決めたのか。目標には、そこまで書いてあってもよいはずです。

目標が、仕事を増やす理由になってしまう

売上が足りないとき、仕事を増やす判断には安心できるところがあります。訪問件数や投稿数なら数えられる。「何もしていないわけではない」と、自分にも社員にも説明できます。一方で、今ある仕事を見直すには時間がかかる。何を変えればよいかも、すぐには分からない。

だから、気づけば昨日と同じ仕事を、もう少し多くやることになる。もしそんな状態にあるなら、忙しさを努力不足の問題にしないでほしいのです。仕事を選ぶために立てたはずの目標が、仕事を増やす理由に変わっているのかもしれません。

「売上を一割増やす」は、自社が欲しい結果です。しかし、お客様には、こちらの目標を達成するために買う理由はありません。相手には相手の予定があり、困りごとがあり、済ませたい用事がある。そのどこを、自社の力で変えられるのか。私は、目標と日々の仕事の間に、この問いを置きたいと思います。

見積もりは送った。でも、お客様はまだ決められない

たとえば、部品の加工を請け負う会社を経営しているとします。あるメーカーの開発担当者から、「新製品の試作に使う部品をつくってほしい」と相談が届きました。

加工会社の営業担当者は、依頼主であるメーカーの開発担当者に見積書を送り、設備や加工精度も説明しました。営業担当者は、見積書を送ったことで、この案件への対応を終えたつもりでいました。ところが、見積書を受け取ったメーカーの開発担当者からは返事が来ません。

依頼主の開発担当者が確かめたかったのは、金額だけではなかったとします。「金曜日の社内会議で、この条件なら試作に進めると報告できるか」。その判断に必要な情報を待っていたのです。

ところが、届いた見積書を見ても、今の図面で部品をつくれるのか、追加で何を決める必要があるのか、希望の日程に間に合うのかが分からない。見積書は届いても、開発担当者は試作を進める判断ができません。

加工会社の営業担当者は「必要な説明をした」と考えている。でも、依頼主の開発担当者は「これでは社内で話を進められない」と感じている。同じやり取りでも、仕事が進んだかどうかの捉え方は違います。

この場合、加工会社が見積もりの件数を増やすだけでは、返答を待つ案件が増えるかもしれません。先に見直したいのは、見積書を受け取ったお客様が、次に何を判断できるようになるかです。

たとえば、加工会社から「今の図面でつくれる部分」「追加の確認が必要な部分」「納期を回答できる日」を整理して伝える。そうすれば、依頼主の開発担当者は、社内会議で何を決め、何を保留すればよいかを考えられます。

無理な納期を引き受ける話ではありません。対応できない条件が早く分かれば、依頼主は別の日程や方法を検討できます。自社の仕事が終わったことと、お客様の仕事が進んだことは、同じではないのです。

お客様の変化を決めると、先にやる仕事が変わる

この加工会社の経営者が、売上目標の隣に「試作を進めてよいか迷っている人が、次の判断をできる状態にする」と書いたら、来週の予定はどう変わるでしょう。設備紹介の資料をもう一冊つくる前に、最近送った見積もりを営業担当者と振り返る時間を取るかもしれません。なぜ依頼主が発注を決められなかったのかを確かめるためです。

営業担当者がメーカーに必要な情報を何度も聞き直していたなら、相談の最初に確認する項目をそろえる。納期や加工方法を判断するために、営業から社内の技術担当者へ何を確認するかも決めておく。社長が夜中に一件ずつ調整するのではなく、営業と技術の担当者が日中に確認を進められるようにする。目標が、ようやく仕事の選び方を変え始めます。

もちろん、確認項目をつくっただけでは改善したとは言えません。使ったあとに、メーカーとの質問の往復が減ったか。依頼主の開発担当者が日程や仕様を決められたか。その先の受注につながったかを見ます。加工会社の手間ばかり増えて利益が残らないなら、対応する範囲や価格も考え直す。お客様が前に進めることと、自社が続けられることの両方を確かめます。

ここまで分かると、結果が出なかったときにも、次の問いが変わります。「もっと説明しよう」ではなく、「依頼主が確かめたかったことを、取り違えていなかったか」。「訪問を増やそう」ではなく、「今の対応のまま、相談だけ増やしてよいか」。努力を増やす前に、直せる仕事が見えてくるのです。

経営者にも、途中の前進を認められる物差しがいる

これは、加工会社だけの話ではありません。社員には「前よりできるようになったね」と言えるのに、自分には「まだ売上が足りない」としか言えていない。そんなことはないでしょうか。支払いや給与を考えれば、数字から目を離せないのは当然です。けれど、売上に表れるまでの変化を一つも認められないと、毎日働いていても、自分は何も進んでいないように感じてしまいます。

「頑張ったから、それでよい」と言いたいのではありません。頑張った結果、お客様の何が変わったのかを見たいのです。昨日までは何度も確認が必要だったことを、今日は一度の返答で決めてもらえた。経営者がいなければ止まっていた相談を、自社の社員だけで進められた。そうした変化は、売上目標の達成とは別でも、仕事が良くなった証拠になります。

そのうえで、受注や利益にもつながっているかを確かめる。つながらないなら、相手の困りごとの捉え方や、仕事の進め方を見直す。数字を見て終わるのではなく、数字に至るまでのどこを変えるかを考えられます。経営者が自分にかける言葉も、「まだ足りない」だけではなくなります。

私は、ここに目標を決める意味があると思っています。経営者が一人で足りない分を背負うためではなく、会社として何を良くするのかを、社員と一緒に考えられるようにする。目標が具体的になったかどうかは、数字の細かさより、「だから今週は、これを先にするんですね」と話せるかに表れます。

売上目標の隣に、もう一行

次の目標を考えるときは、「いくら売るか」の隣に、もう一行だけ書いてみてください。自社の技術や経験によって、どんな人が、何に困っている状態から、何ができる状態へ変わるのか。「満足してもらう」だけでなく、相手の仕事や暮らしの中で、変わる場面を思い浮かべます。

立派な言葉でなくてかまいません。最近のお客様の一人を思い出し、その人が困っていたことと、自社に頼んだあとにできるようになったことを書く。まだ分からないなら、その人に聞くことから始める。そして、その変化を次のお客様にも届けるために、来週、何に時間を使うかを一つ選びます。

その仕事を、今ある予定の上に積まないことも大切です。誰が、いつ取り組むのか。その時間をつくるために、何を減らし、何を後にするのか。そこまで決めて初めて、経営者自身の夜を使わずに、目標へ向かう準備ができます。

今日も、やるべきことはやった。それでも数字が動かない夜に、すぐ「明日はもっと頑張ろう」と結論を出さなくていい。今日の仕事で、お客様の何が変わっただろう。その変化を増やすために、明日はどの仕事を変えようか。足りない自分を探す代わりに、そう問い直せる目標を持ちたいのです。


前田正浩 プロフィール画像

前田正浩

2000億円売ってきたからわかること

DEARS CONSULTING代表。商品や価格、ブランドについて、経営の現場で考えたことを書いています。

関連記事

error: Content is protected !!