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売れている商品を真似る前に、選ばれる理由を分解する

「この広告、うちでもやってみよう」

売れている商品や反応の良い広告を見ると、自社にも取り入れたくなります。写真の見せ方、目を引く言葉、料金の組み方。参考になるものは、いくらでもあります。

ただ、作り始める前に、一度立ち止まって考えたいのです。その工夫は、誰の、どんな気持ちに応えたから機能したのでしょうか。

マーケティングで大切なのは、売れている形を集めることではありません。その形が必要とされた理由を理解し、自社のお客様に合うものへ組み直すことです。私は、この「作る前の分解」が、企画の質を左右すると考えています。

見た目の工夫より、その工夫が必要だった理由を見る

例えば、贈り物用の商品ページを参考に、新商品を企画するとします。写真が美しく、包装にも品があり、商品の紹介文も短くまとまっている。そこで、同じような写真と包装を用意すればよいと考える。見える部分を参考にするなら、自然な発想です。

でも、贈る人が気にしているのは、見栄えだけでしょうか。相手の好みに合うか。失礼にならないか。渡す日までに届くか。値段が分かるものは同封されないか。「喜んでもらいたい」という気持ちのそばには、自分の選択を外したくないという不安もあるはずです。

もし、そのページに贈る場面別の選び方や到着日の目安、包装の中身が分かる写真があれば、それぞれが違う迷いに答えていると考えられます。一方で、素材の背景や作り手の考え方は、「これを贈りたい」と思う理由になっているかもしれません。きれいなページとして眺めていたものが、お客様の気持ちと判断を受け止める設計として見えてきます。

参考にしたいのは、写真の色や文字の配置だけではありません。「誰が、何を確かめられるようになったのか」「何に心を動かされたのか」です。同じ配置を再現しても、お客様の迷いが違えば、必要な情報も変わります。

「誰に売るか」を、買う場面まで具体的にする

「忙しい人向け」「品質にこだわる人向け」。これだけでは、何を作り、どう伝えるかまでは決まりません。同じ人でも、自分へのご褒美を探しているときと、明日会う相手への贈り物を探しているときでは、見るところが違うからです。

前者なら、時間をかけて素材や背景を読み、好きになれるものを選びたいかもしれません。後者なら、今日受け取れるか、そのまま渡せるかが先に気になるでしょう。相手の年齢や職業だけでなく、「何が起きて、今これを探しているのか」まで見る。タイミングとは、季節や流行だけでなく、その人の事情でもあります。

また、比べている相手も、同業他社とは限りません。贈り物なら、品物ではなく食事に誘う選択肢もある。業務用のサービスなら、他社へ頼むだけでなく、社内で済ませる、今は何もしないという選択肢もあります。商品同士の違いを並べる前に、お客様が何と何の間で迷っているかを捉えたいところです。

私は、参考になる事例を見たら、次の流れを言葉にしてみます。「この人は、こんな場面で、こうなりたいと思っている。ただ、この不安があって動けない。そこに、この言葉や仕組みがあり、他の選択肢ではなく、今これを選ぶ理由になっている」。途中が埋まらなければ、まだ分からない部分があるということです。無理にきれいな答えにせず、調べる場所として残しておきます。

コピーだけでなく、選べる仕組みまで分解する

「今これを選ぶ理由」は、言葉だけで作るものではありません。贈り物の例なら、「大切な日に間に合います」と書くには、それを実現できる在庫や発送、受け渡しの仕組みが要ります。言葉が魅力的でも、購入画面で到着日が分からなければ、お客様の迷いは解消しません。

広告で気になり、商品ページで確かめ、注文して受け取る。その流れの中で、どこが欲求に応え、どこが不安を減らしているのか。広告の一文だけを切り取るのではなく、言葉を成り立たせている設計まで見る必要があります。

ビジネスモデルも同じです。月額制がうまくいっているように見えても、毎月支払う形だけを取り入れればよいわけではありません。お客様が毎月必要とするものは何か。まとめて購入するより、続ける方にどんな意味があるのか。そして、その価格と対応を無理なく続けられるのか。支払い方の奥にある、利用する理由と提供できる条件を分けて考えます。

こうして見ると、マーケティングは制作担当者だけの仕事ではなくなります。どのお客様の、どんな期待に応えるのか。そのために何を用意し、どこまでは対応しないのか。広告を作る前に、経営として決めておくことが見えてくるからです。

自社に移すときは、同じことより同じ役割を考える

他社のやり方が分かっても、それをそのまま自社で実行できるとは限りません。すでに知られている会社と、初めて知ってもらう会社では、説明が必要な量も違います。配送体制や人員、商品の利益も違う。表に見える工夫だけでなく、その会社だから成り立つ条件があります。

例えば、他社の「翌日配送」が選ばれる理由だと考えたとします。それでも、自社に同じ体制を作るのが最善とは限りません。お客様が求めているのが「早さ」なのか、「必要な日までに確実に受け取れること」なのかで、考えるべき方法は変わります。後者なら、余裕を持って予約できる仕組みや、受け取れる日を明示することも検討できます。

取り入れるのは、翌日配送という答えではなく、「受け取れるか分からない不安に答える」という役割です。同じ役割を、自社の強みと体制でどう果たすか。ここまで考えると、成功事例を参考にしながら、自社なりの企画を作れます。できないことまで似せる必要はありません。

説明できた理由を、そのまま正解にしない

もう一つ、大切なことがあります。外から見える情報だけで、売れた原因を言い切ることはできません。写真が良かったのか、以前からの信頼があったのか、紹介が多かったのか。そもそも注目されていることと、利益が出ていることも別です。整った説明ができても、それはまだ仮説です。

だから、「到着日の不安が解消されて選ばれたのではないか」と考えたなら、自社への問い合わせでも、受け取り時期について聞かれていないかを確認する。案内を変えた後は、同じ質問や注文前の迷いがどう変わったかを見る。売上が増えたかだけでなく、自分が想定した変化が起きたかを確かめます。違っていたなら、お客様の見方を修正する材料になります。

言語化できない成功を、すべて偶然と片づける必要はありません。経験や技術が働いている場合もあります。ただ、理由が分からないままでは、次に何を残し、何を変えるかを決めにくい。言葉にするのは、過去の成功をうまく説明するためではなく、次の判断に使うためです。

「何を作るか」の前に、「なぜそれを作るか」

新しい広告や商品を作る前に、参考事例の画像だけを並べるのではなく、そこから何を読み取ったかを一段落で書いてみる。「誰の、どんな場面に向けたものか。何を望み、何を気にしているのか。今回の企画で何に応えるのか。自社にはそれができるのか」。この説明があれば、写真やコピーを選ぶときにも、好みだけではない基準を持てます。

分からないことをすべて解消してから作る、という意味ではありません。分かっていることと、これから確かめることを分けたうえで作る。その違いです。何を作るかにセンスは表れます。でも、何を作るべきかは、お客様への理解を深めることで見えてきます。マーケティングは、作ったものを届ける仕事であると同時に、作るべきものを見極める仕事なのです。


前田正浩 プロフィール画像

前田正浩

2000億円売ってきたからわかること

DEARS CONSULTING代表。商品や価格、ブランドについて、経営の現場で考えたことを書いています。

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