AI時代も、「欲しくなる理由」と「買う決め手」は分けて考える
「欲しい」と思うきっかけと、「これを買おう」と決める理由は、同じとは限りません。
たとえば、動画を見て調理家電が欲しくなり、AIで容量や手入れの方法を確かめて買う。この場合、動画は欲しい気持ちをつくり、AIは自分に合うかを判断する助けになっています。
企業が伝えることも、二つに分けられます。使ってみたいと思える魅力と、納得して選べる情報です。
お客様は、何を知りたくてAIを開くのか
「夕食づくりを楽にしたい」と相談する人は、まだ家電を買うと決めていないかもしれません。その人には、どの作業が減り、暮らしがどう変わるのかを伝える必要があります。AIとのやりとりで初めて商品を知り、欲しくなることもあるでしょう。
一方、すでに気になる家電がある人なら、知りたいのは「家族の分までつくれるか」「毎回洗うのは大変か」といった具体的なことです。そこで機能の多さを繰り返しても、疑問への答えにはなりません。
同じAIへの相談でも、候補を探しているのか、気になる商品を確かめているのかで、必要な説明は変わります。人を二つのタイプに分ける話ではなく、そのとき何を決めようとしているかを見る話です。
魅力が足りないのか、判断する情報が足りないのか
- まだ関心がない人には、使う場面や得られる変化を伝える。
- 気になるのに決められない人には、残っている疑問に答える。
たとえば講座なら、「こんなことができるようになる」という紹介は関心を生みます。でも、参加を考え始めた人には、「初心者でもついていけるか」「欠席したらどうなるか」の答えも必要です。
興味を持った後の質問に答えられていないのに、宣伝だけを増やしても、その迷いは残ります。反対に、詳しい条件を並べるだけでは、参加したい気持ちは生まれにくいでしょう。
次に写真を変えるのか、説明を書き直すのか。お客様がどこで止まっているかによって、お金と手間をかける場所が変わります。
最後に使ったものだけが、売れた理由ではない
「AIに相談して買いました」という答えだけで、AIが購入のすべてを生んだとは判断できません。最初に興味を持った理由が、写真や店頭での体験だった可能性もあるからです。
最後に使われた情報だけを評価すると、関心を生んでいた発信や接客の役割を見落とします。
だからといって、効果の分からない発信を何でも残すわけではありません。どこで気になり、何が分かって選べたのか。その話を聞いてから、次に力を入れる場所を決めたいのです。
お客様に聞くことは、この二つ
「最初に、何を見て気になりましたか」
「買う前に、何を確かめましたか」
一つ目は、欲しくなる理由を知るため。二つ目は、選ぶために必要だった情報を知るためです。
そこでAIが使われていたら、何を相談したかも聞いてみる。比較なのか、使い方なのか、自分の条件に合うかどうかなのか。答えに合わせて、商品ページや店頭の説明を直せます。
料金の総額、利用条件、購入後の相談先などは、自社でも確認できるようにしておきます。合わない条件も伝えたうえで、お客様が買わないと判断する余地を残す。納得して選んでもらうとは、そこまで含むと思います。
もちろん、購入した人の記憶だけで全体は分かりません。日々の問い合わせや、買うのを見送った人の話も、聞ける範囲で合わせて見る必要があります。
AI向けの情報を増やす前に、知っておきたいのはお客様が選ぶまでの流れです。何が気持ちを動かし、何が迷いを解いたのか。それが分かると、自社の発信で次に整えるところが見えてきます。
調査から分かること
マインディアが2026年7月23日に公表した調査では、ふだん生成AIを使う2,656人をベースに、68%が購入判断の参考にAIを利用すると回答しました。「よく」と「ときどき」の合計で、消費者全体の割合ではありません。出典:株式会社マインディア「生成AIを活用した購買行動調査」
同日公表の電通デジタルの調査図2では、AIの回答をそのまま採用する割合はカテゴリー別で1〜3%。参考にして自分で決める、または補助的に使う割合が、各カテゴリーでそれを上回っています。対象は、私生活で生成AIを現在利用し、各カテゴリーへの購買意欲がある層です。出典:電通デジタル「生活者のAI活用実態調査 2026.7」図2
二つの調査は対象や設問が異なり、数値の単純比較はできません。また、個別の商品が選ばれた原因を示すものではありません。本文の二つの買い方は、これらの調査による分類ではなく、お客様を理解するための考え方です。
前田正浩
2000億円売ってきたからわかること
DEARS CONSULTING代表。商品や価格、ブランドについて、経営の現場で考えたことを書いています。